Chegg Inc.は、カリフォルニア州サンタクララを拠点とするアメリカのEdTech企業です。教科書レンタル、オンライン家庭教師、およびその他の学生サービスを提供しています。同社は2005年に設立され、オンラインでの教科書レンタルサービスを中心に業績を伸ばし、2013年11月にはニューヨーク証券取引所に上場しました。
今回は、世界有数のEdTech企業であるCheggのビジネスモデルについて見ていきましょう。
Chegg社の事業内容とは?
Cheggはその事業内容から大学生の間では圧倒的な認知度を誇っており、ほとんどの学生がCheggのサービスを耳にしたことがあると言っても過言でもないほど大学教育に浸透しています。

では、その事業内容がどんなものなのか詳しく見ていきましょう。
Cheggは、アメリカの大学生をメインターゲットして、複数の機能を持つ教育プラットフォームを運営しています。2020年12月期の売上高構成比はChegg Services事業80.9%、Required Materials事業19.1%となっている。Cheggの事業はこの2つの事業からのみで構成されシンプルである。

次に、事業内容について細かく見ていく。

Required Materials事業(2020年12月期売上高構成比19.1%)は、デジタル化された教科書や紙の教科書をレンタル・販売するサービス。このサービスが世に出てくるまで大学生は授業を受けるために高価な教科書を何冊も購入する必要があり非常に大きな負担となっていたが、その課題を解決する先駆者として市場を切り開きました。その後、Amazonをはじめとするライバル企業との紙媒体の教科書販売及びレンタルにおける競争激化から2014年には書籍販売業者Ingram社と提携。仕入販売業務を辞め、Ingram社から手数料収入を得る形へ移行。2020年12月期のRequired Materials事業の売上高は123百万ドル(前期比55.7%増)となりました。
Chegg Services事業(2020年12月期売上高構成比80.9%)は、学生向けの世界最大級のオンライン学習プラットフォームです。様々な機能がありますが、主にChegg Study、Chegg Writing、Chegg Math Solver、Chegg Study Pack及びThinkfulによって構成されます。大きく分けると、学校における学習支援サービスである『Chegg Study』『Chegg Writing』『Chegg Math Solver』『Chegg Study Pack』と実務におけるスキルアップを促進する『Thinkful』の2つの区分があります。2020年12月期のChegg Services事業の売上高はコロナによるオンライン学習の加速の影響もあり521百万ドル(前期比57%増)となりました。

このChegg Servicesの月額会員の推移にあるようにFY20においては6.6百万人の月額会員と前年FY19の3.9百万人から急速な成長(YonY67%成長)を果たしており、競争が激化している教科書レンタルを主とするRequired Materials事業ではなくChegg Services事業をより強化していくことでしょう。
ここでChegg Services事業のサービス内容について簡単に紹介していきます。
Chegg Studyとは
Chegg Studyは月14.95ドルから始められるサブスクリプションサービス。このChegg Studyで学生は、約4700万もの専門家による回答済みQ&Aと約600万教科書の問題に対する回答解説が見放題です。また、分からない問題をスマホで写真に撮って送ると、30分程度でエキスパートから解説の返信を得ることができます。そして、一部のサービスは広告によって収益を得ているため無料で利用できます。
このChegg StudyはCheggの中核サービスであるため主要KPIとしてChegg Studyのコンテンツ総閲覧数を公開しています。FY20のChegg Studyのコンテンツ総閲覧数は13.4億ビューとなっており前年同期(FY19は8.1億ビュー)を大きく上回っています。
Chegg Writing
月額9.95ドルのサブスクリプションサービス。課題レポートについて、専門家から24時間以内のフィードバックを得ることができたり、引用の自動生成、文法チェック、盗用チェックができる。
Thinkful

Thinkfulは学生のみならず社会人も含めて、スキルを身につけるためのオンライン教育サービスです。
サービスラインナップにあるように様々なITスキルを身につけることが可能です。
こちらのサービスは、2019年10月に当該サービスを提供していた「Thinkful」という企業を買収することでChegg社が取り込んだ事業となります。
Chegg Services事業のその他サービス
Chegg Math Solverは月額$ 9.95の数学学習ツールです。無料版とは違い、数学の問題の回答集が無制限に見れたり、計算ツールが使えたり、サービス使用中に広告表示がなくなります。
Chegg Study PackはChegg Study、Chegg Writing、Chegg Math Solverの3つのサービスをまとめて使えるサービスで、バンドル値引きにより月額$19.95と少しお得になっています。
過去には教科書とQ&Aを読んだだけでは分からないことを解決したい場合は、マンツーマンで専門家からの指導を受けられるマッチングサービスChegg Tutorが存在していたが、2021年1月にサービス終了している。
*このサービスも2014年6月3日InstaEDUを3000万ドルでM&A(現金取得)により自社サービスに取り込んだもの。
Chegg社の5カ年業績推移

2020年12月期の実績は、売上高644百万ドル(前期比57%増)、営業利益52百万ドル(同289%増)、当期純損失6百万ドルとなった。コロナによる学習のオンライン化が進み増収増益となったものの税引き後損益においては引き続き赤字となった。
Chegg社の今後の展望

Cheggによると、TAMを1.02億ユーザーと設定している。その内訳はアメリカにおける大学生・高校生が約3600万人、カナダ、オーストラリア、イギリスにおける約1800万人、その他の国における英語による学術科目を受ける大学生が約4800万人とのこと。現状では、ほとんどがアメリカ国内のユーザーではあるが積極的にグローバル展開をしていくつもりなのであろう。

Cheggはプラットフォームに統合可能な様々なサービスをM&Aによって取得していっているため、グローバル展開についても各国において一定シェアを獲得しているEdtech企業の買収によって展開していくことも考えられる。その証拠に2021年11月29日には、2008年にヨーロッパで設立されたオンライン学習のスタートアップBusuuを全額現金取引で約4億3600万ドルにて買収している。このBusuuは英国のロンドンとスペインのマドリッドにオフィスを構える新しい言語学習コンテンツが豊富な教育プラットフォームを運営している。これによりヨーロッパ市場へのChegg Servicesの展開を進めるとともに、Busuuのアメリカでの展開も進める模様。上記スライドにおけるその他の国に日本も記載されているため、近い将来日本のEdTechベンチャーの買収やCheggの進出もあるのかもしれません。
参照元:Chegg 2020 Fourth Quarter Results Conference Call(Presentation)