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中国版WeWork『Ucommune(優客工場)』が直面するIPO後の課題とビジネスモデル転換とは?

Ucommune社のアイキャッチ

 Ucommune(優客工場)は、2015年に毛大庆(Mao Daqing)によって設立された北京に本社がある中国最大のコワーキングスペースプロバイダーで中国版WeWorkととも言われていました。
※以前はUrWorkという名称でしたがWeWorkからの訴えがありUcommuneへ名称変更実施

 Ucommune(優客工場)は、ナスダック上場を果たしましたが、創業当初のビジネスモデルからの転換を行いながら、マネタイズを図って行っています。

 当初、Ucommune(優客工場)はWeWorkと同様にサブリースモデルにより規模を拡大してきました。ここで言うサブリースモデルとは、不動産を所有するオーナーから一括借上を行い、それをサブリース会社(=Ucommune社)がリノベーションを行った上で、第三者に又貸しをする手法です。

 株式上場を果たしたUcommune(優客工場)ではありますが、売上高から賃貸料に加えてリノベーションに紐づく減価償却費を引いた売上総利益ベースでも赤字であり、そこにオペレーションコストやマーケティングコストが加わり高コスト体質であり赤字が続いています。また、中国においては競合乱立しており市場シェアは10%にも満たない状態で、メイン顧客は資金力がない(資金調達もしていないような)中小・零細企業であることから、コストを価格転嫁することが難しい状況であります。※大企業は工業団地に拠点を構えている会社が多い

 そんな状況下でUcommune(優客工場)は大きく3つの方法で収益力向上を図っているようです。

目次

中国版WeWork『Ucommune(優客工場)』のビジネスモデル3つの転換策

Ucommune(優客工場)3つのビジネス転換
  1. コワーキング事業をアセットライトモデルへ転換
  2. 入居者への付加価値サービスの拡充
  3. toC向け新規事業の拡大

 1つ目はコワーキング事業をサブリースモデルからの脱却させアセットライトモデルへ転換です。これは不動産オーナーが自らリノベーション費用を負担し、Ucommune(優客工場)はコワーキングスペースの設計、建設、管理のサービスを提供するフランチャイズモデルに近い形です。これによりUcommune(優客工場)はリスクを小さくビジネス拡大を目指しています。これは競合であるWeWorkもビジネスの立て直しにおいて同様の戦い方を取っています。

 Ucommune(優客工場)のアセットライトモデルを更に細かく見ていくと、このモデルにはUブランドとUパートナーの2種類があることが分かります。

 Uブランドでは、所有者はFCビジネスにおけるフランチャイジーに相当します。所有者はコワーキングスペースのための、場所を提供するとともに。リノベーションにかかる費用も所有者本人が負担します。Ucommune(優客工場)は、主にブランドの設計・建設サービスに関連するコンサルティング料と運営サービスの管理費を徴収します。

 UPartnersは、2019年7月にUcommune(優客工場)がスタートしたプランです。このモデルでは、Ucommune(優客工場)は不動産オーナーと賃貸収入を共有しますが、Ucommune(優客工場)側の利益配分は30%を超えないケースが多いと言われています。

 これらのアセットライトモデルの比率はUcommuneの発表によれば、”2021年末までに、アセットライトモデルで管理されるプロジェクトの割合が2020年の約50%から約75%に増加すると予想される”という。サブリースモデルが業績に与える影響は今だに大きいため、それを埋めるほどには至っていないですが、転換は進んでいっていることは事実のようです。

 2つ目は、入居者への付加価値サービスの拡充です。UCommune入居者に対して「UPlus Service」と呼ばれるサービスを提供しています。このサービスには、ケータリング、フィットネス、ヘルスケア、トレーニング、エンターテインメントなどの個人向けのサービスが含まれます。企業秘書サービスなどの企業サービス、人事、法務、財務、ITサポート、税務サービス、インキュベーションおよび企業アドベンチャーサービス、設計および建設サービス、広告およびブランディングサービスがあり提供されたサービスに基づいてメンバーに課金し、メンバーから収入を得ます。

 この中でも最も大きな収益となっているのは、2018年12月に買収したShengguangZhongshuoが提供するブランディングやデジタルマーケディングのサービスです。

 このような収益化の取り組みは少しずつ成果を見せつつありますが、今だに赤字が続いており、

 2021年6月にはCEOとCFOがそれぞれ退任し交代、創業者である毛大庆が取締役会会長へ復帰というプレスリリースが、2021年9月1日には日本料理レストランブランド「Xiao Sushi」を中国全土に32店舗を展開するBeijing Kuanneng Technology Co.、Ltd。(「BeijingKuanneng」)の60%の株式持分を取得するなど動きが激しいです。

 北京クアネンは、北京エリアに地理的に集中している日本料理レストランブランド「Xiao Sushi」を所有および運営しています。「それは絶妙な店舗、新鮮な食材、そして手頃な価格設定では2014年に発売されたので、シャオ寿司」ブランドは、かなりの成功を達成した「暁寿司」の忠実な顧客の何百何千と同様、高い評価を得ています。また、人気の高い「シャオ寿司」は、中国全土に32店舗を展開することに成功しました。「シャオ寿司」は約2,210万人民元の収益を上げた2020年に、2021年上半期にすでに約2,200万人民元の収入を生み出しています。

Screenshot of xiaoshousi.com

画像引用元:https://xiaoshousi.com/

 3つ目はこの北京クアネンの買収における新規事業の拡大です。

 この買収はUcommune(優客工場)において分かりやすいシナジーはコワーキングスペースにおけるケータリング活用による売上増くらいかなと思ったものの、実際にXiao Sushiのホームページを見てみると掲載店舗は北京にある11店舗のみで、目立つ形でフランチャイズ募集の記載あり。プレスリリースには中国全土で32店舗展開と記載があるので、

 32店舗ー11店舗=21店舗はフランチャイズによる運営?

といったフランチャイズ本部の買収というイメージなのかもしれません。こうなってくると、この買収は少し印象が変わってきます。

 コワーキングスペースを中国全土に持っているため、様々な地域においてフランチャイジー候補の法人とのネットワークはあるのでしょうし、コワーキングスペースのリノベーションを自社で行うために建設業者も傘下に収めているので、そこからも利益は一定取れる。元々フランチャイズモデルはリスクを小さく、加盟金などのイニシャルフィーを確保でき、安定した収益が閉店しない限り得られるため、このビジネスにおいて中国全土へ店舗展開が出来れば新しい収益源になり得るかも、という思惑があるのではないか。

画像引用元:Xiao Sushiトップページより
画像引用元:Xiao SushiのFCページ

 そのような展開がすぐにできるブランドを上手く青田買い出来たのであれば面白い展開になるのかも知れません。

 中国国家統計局が15日発表した11月の主要経済指標によると、消費動向を示す小売売上高は前年同月比3・9%増だった。伸び率は前月を1・0ポイント下回り、3カ月ぶりに減速した。中国各地で新型コロナウイルスの散発的な流行が続いていることを受け、「ゼロコロナ」政策の下で移動制限など厳しい措置がとられていることが響いた。コロナ対策の影響を受けやすい飲食店収入は2・7%減で、3カ月ぶりにマイナスに転じた。

https://www.iza.ne.jp/article/20211215-QGDTCPHH6VLMLIXUNDWGQHGAXY/

(なお、このように中国の飲食店はコロナの影響を再び受ける可能性はあります。)

 減損の影響など、赤字額ほどは実際のキャッシュアウトは大きくありませんが、キャッシュフロー自体は大きくマイナスで、手元Cashも潤沢にある訳ではないという厳しい状況ではあります。

 ただ、急拡大をしたビジネスの再構築を図りながら、キャッシュフローが良いビジネスの急拡大を図るというアクションを急ピッチで進めていることから、今後どのような結果を生むのか、そして同業のライバルであるWeWorkはどうなるのか、については追っていきたいと思っています。

直近の株価

画像引用元:https://www.bloomberg.co.jp/quote/UK:US

 なお、株価は急落しており2021年12月末時点で時価総額 58.919百万USD(約68億円)とユニコーン企業だったときから評価額はかなり下がってしまっています。

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この記事を書いた人

中国在住のビジネスパーソンや中国人などの複数名で中国に関する有益な情報を丁寧に解説します。

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